入院の顚末

先月24日、訪看が来た時に何気なく相談という形で、

夫は入院はしたくない人だから、いずれは訪問診療になるかもしれないので、

例えば、今から通院と訪問診療の二本立てで訪問医にお願いするということはできるだろうか?

と、聞いてみたわけ。何気なく。あくまでも相談という形で。

そうしたらあなた、我が意を得たりというか水を得た魚というか、俄然張り切っちゃって

「そういうお気持ちがあるのなら、まず主治医に相談して、

ウチといつも連携している在宅専門クリニックの先生に来てもらえるように

こちらでも手配できますから!!」と、前のめり的に乗ってきたわけ。


いや、えっと、まだ相談段階と考えてもらいたいんだけど・・・


なんていうこちらの思いは全く無視して、どんどん話を進めようとする。


「まず、通院している病院の相談センターに予約を入れて、訪問診療の相談をしてください!」

何だか訳も意味も分からないまま、相談の予約を入れる電話をかけさせられた。


結果的に、相談の予約なんて取らずに電話で事が済んだわけだが。

相談センターから主治医に、訪問診療を希望しているようだ、みたい言い方で伝わったらしい。


主治医には、以前から訪看に在宅医を入れるように勧められているが

その気がないと言うと「現状を分かっていない」とか言われて困っているということを

何度か話しておいた。

家で夫をみているだけで精神的にアップアップな状態のところに

訪看から勝手に訪問診療に切り替えるんだよね!的な追い込まれをされて

本当に気持ちが参っていた。


MRIの予約の前日の夜、主治医から電話が来た。

「明日から入院しましょう!」

少し詳しく検査をするために、何度も通院するのは大変だから、というのが表向きの理由。

「せん妄が酷くなる恐れがあるので、個室で奥さんも一緒に泊まり込みましょう!」

たぶん、訪看の攻撃(!)から私を守るために考えてくれた苦肉の策なのではないかと思っている。


本当にありがたかった。

個室の個人負担室料はイタかったし、付き添い用のベッドは簡易すぎて寝心地最悪だったけど、

精神的には落ち着きを取り戻せた。


入院中は、主治医の言葉通り、初日が頭部MRI、翌日は上半身のCTの検査。

MRIで、これといった腫瘍は認められないものの

脳の浮腫が見受けられ、髄膜播種だろうとのこと。

CTでは、多発骨転移がわかった。

脳の浮腫はステロイドで対処し、骨転移の痛みは放射線をかけることになった。


全脳照射の時のように、何度も放射線をあてるのかと思ったら、

痛みをとるだけの治療なので1回だけなのだそうだ。

1週間くらいしてから効果が徐々に出てくると思うとのこと。

それまでは、ロキソニンで痛みを抑えてみるということになった。


ステロイドは点滴で入れた。


入院するときはかろうじて介助があれば歩けたし、トイレにも行かれたのだが、

翌日から急に、介助があっても立つことができなくなり、

支え無しでは座っていることもできなくなった。


その変化たるや、坂道を転げ落ちる石ころの様。

あまりの変化にびっくりしてついていくことができず、私は何かにつけて涙が出て困ったほどだ。

もちろん、一番びっくりして困ったのは夫のはずだが、

夫は精神科でいうところの『遁走』状態だったのか、あるいは髄膜播種の症状のひとつなのか

『宇宙人モード』になってしまい、会話もままならないし、1日中眠っている状態。


そして、確実にもう、車椅子に乗ることも無理な状態になり通院不可能ということになり、

これは在宅診療に移行するしかないと、私も納得せざるを得なくなった。

夫は宇宙人モードのままなので、全然納得してないのだろうけど。


そこで困ったのは医師選び。

最期まで治療続行を希望する私たち夫婦の意向に沿ってくれる在宅医は、

どこかには居るのだろうが、このあたりにはいない。

主治医が考えに考え抜いて、奥の手を使ってくれた。


この主治医が勤務するK病院では、往診をすることがない。

夫の病気がわかった時からずっと、主治医と一緒にチームを組んでみてくれている

非常勤の、自分のクリニックを持っているM医師が、

自分のクリニックで往診を引き受けよう!と言ってくれた、

のか、主治医が頼み込んでくれたのか。

そのクリニックでは在宅医療は年に1件くらい、しかも近隣の患者しか引き受けないらしい。

そりゃそうだ。

自分のクリニックの患者をみて、K病院にも非常勤とはいえ、

ほぼ毎日顔を出しているのだから、往診に行く時間が取れるわけもない。

うちからそのクリニックまでは車で30分強の距離だろうと思う。

往復1時間強。

しかも、K病院からうちに来るには、K病院からクリニックに帰るのとは反対方向なのだ。

ありがたくて、涙がちょちょ切れる。


思わず泣いてしまったら

「大丈夫?奥さんが倒れたらご主人が困るんだからね。

気を強く持ってね!」と励ましてくれた。

ありがとう、先生。


このクリニックはうちに来ている訪看ステーションとは何のつながりもなく、

訪看はイマイチ納得がいかないようで、

退院前カンファレンスでも不満顔爆発!といった感じだったが、

患者の意向が第一!でしょ?そうだよね?って、主治医がチクリと言ったらさすがに黙り込んだ。

それでも、患者に呼ばれて主治医が席を立った隙に、

「でも、納得いかない!」みたいなことを言ってたけど。

そんなに自分の配下に置きたいのか・・・


後で主治医が病室に来てこっそり、

「独特の雰囲気を持った人たちですねー・・・」とこぼした。

私が訪看にいろいろ言われて精神的に参ってしまった理由をわかってくれたようだ。


とりあえず、勝った!


退院日、

ケアマネ、訪看2人、介護ヘルパー2人、在宅専門の薬剤師、訪問入浴ヘルパー2人が

夫の様子と夫が寝ている部屋の様子を確認しに来て、

入れ代わり立ち代わり、いろんな説明をしてくれて、契約書のサインを求められて、

夫だけでなく、私だって病院帰りなのに~!と内心悲鳴を上げながら、

やっと入院生活が終わった。


早速今日から介護ヘルパーが入った。

私一人ではできないところを手伝ってくれるから、楽だ。

お金はかかるけど。


私の老後は、誰がこんな手続きをしてくれるのだろうかと不安になった。

そして、これから、お金は足りるのだろうか?

今から就職する?そしたら夫の介護はどうなる?ヘルパーを頼むとまたお金がかかる。

悪循環だ。世の中、お金がモノをいう。

ほぼひとりごと

2010年、乳がん発覚(DCIS・0期)、患側全摘手術、2011年再建、2018年サイズダウン。 2015年、夫の肺腺癌発覚(胸水確認・4期)、2016年多発脳転移、2017年髄膜播種、多発骨転移、かえらぬ人に。 2017年X'mas、診断:PTSD・うつ。双極性障害の疑い。2021年、発達障害の疑い。 そんな日々の記録と愚痴。

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